Rep Journal, September 2002

   いつも高速道路を運転していると、ときどき無性に電車に乗りたくなる。何も考えずに安全に目的地に行ける都市交通こそ、日本の数少ない世界に自慢できるものの一つだ。カリフォルニアでは慢性的な高速道路の渋滞、大気汚染など自動車が社会に及ぼす影響が非常に問題になっている。 日本のように、これから本格的な高齢化社会を迎えるところとは違い、人口は増える一方だ。 しかしこれらの問題は、何もカリフォルニアだけに限ったことではなく、全米の大都市で抱えている問題 である。長距離輸送となれば飛行機があげられるが、これとて空港は常に混雑を極め、ほとんどの大空港では限界状態にきている。 中近距離輸送となるとアメリカではまず自動車という事になるが、しかし高速道路がもう飽和状態になりつつある大都市 ・都市間では、早急に中近距離輸送の手段を確立していかなければならない。 そんな中、今回はアメリカの都市鉄道の状況をリポートをしてみよう。

アメリカ3地帯(東部、中西部、西部)のなかで、都市及び都市間交通が比較的に発達している東部では、一般の市民の都市交通に 頼る比率が非常に高く、それだけ人々が信頼して利用していることになる。 しかし残りの地域では、シカゴを除くすべての都市では完全に自動車に圧倒されている。 最近、都市交通を整備しようという動きがこれら都市交通の立ち遅れている都市で 特に目立ってきている。 それもそうだろう、あまりの人口の急激な増加で、高速道路を新規に建設しても10年もしないうちに再び慢性的な渋滞となってしまうのであれば、今までとは根本的に違う都市交通を考えなければならない。

LA近郊に向けてはコミュータートレインが活躍しているが、規模が小さすぎる。

ロサンジェルスは、近郊の人口を含めると約1,500万に達する。 自動車・バスが公共輸送に占める割合が99%で、車1台に1人というのは東京、パリ、ロンドンなどに比べるといかに人々が自動車だけ の輸送に頼っているのかが良くわかる。 ロサンジェルスに昼ごろ飛行機で到着した事のある人は見たことがあるかもしれないが、ロサンジェルスの北及び東の山々を越えたとたん薄い雲がひろがっている、これは自動車から排出された排気ガスだ。 また全米一広く大きいとされているカリフォルニアのフリーウェイは慢性的な渋滞で、まるで高速道路全体が駐車場のよう である。 日本のように2−3車線の道が混むのはあたりまえだが、片側7−8車線の道が自動車でいっぱいになっているのを見ると、もう自動車を作りすぎている、と誰もが思うに違いない。 通勤輸送の為の近郊型鉄道もあるにはあるのだが、1時間に1本程度では、誰も使いたいとは思わない。 また、アメリカの電車・地下鉄は駅でアナウンスをほとんどしない、当然時刻表もないし、いつの間にかやって来て、いつのまにか去っていくのだ。 日本にいてあたりまえに数分おきに電車がやって来って、事こまかくアナウンスをしている国は世界中で日本以外には無い。

東京、パリ、ロサンジェルス

3つの都市圏を比べると、一番人口と交通網のバランスがとれているのはパリだ。イル・ド・フランスと呼ばれるパリ首都圏(行政権)は、面積が東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県を合わせた面積とほとんど同じで人口はおおよそ600万だ。これに比べていわゆる一都三県は、3200万を超える。これはフランスやイギリスの全人口の半分に相当する。鉄道・地下鉄の営業距離は東京の方が若干長いが、人口で割ると1人当たりの営業距離は非常に短く、人口をカバーできていない。それに比べパリは人口が少ないに関わらずどこでも電車で移動できる事になる。 だから東京では10両編成を超えた電車が常に満員なのは偶然ではなく、人口をカバーできていない証拠なのだ。 つまりもっと言えば東京の都市鉄道はパリに比べ住民に対してのサービスが足りない事になる。 パリやロサンジェルスでこのようになったら、間違いなく暴動に発展するだろう。 これは自分が大学生の時ワシントンDCの地下鉄を利用していたが、通勤ラッシュアワー帯でも、新聞が楽に読め、決して人と人がぶつかる事は無かった事が証拠になる、しかも車両は 4両や6両編成でだ。 東京やパリに比べるとロサンジェルスの都市鉄道は無いに等しくなる。 地下鉄もあるにはあるが、営業距離がこれまた短くどこも行けない。 そもそもロサンジェルスといっても近郊の郡市を合わせた面積は、一都6県(関東)より広く人口も、うまく散らばっているため、仮に鉄道を走らせても、一時間に1本というのは 決して少なくはないことになる。 これが市民が自動車に頼ってしまう都市鉄道という面から見た事実のようだ。

最近利用客も増えたLAのレッドライン

有事の際は核シェルターにもなるワシントンDCの地下鉄

しかし自動車交通は環境など様々な社会影響を考えるとこれ以上増加させる事はできない、しかしながら地下鉄は工期も長い上、 資金が掛かりすぎる。 そこでLR−ライトレールを導入する自治体がアメリカで増えてきている。

LRのパイオニアー、SFのケーブルカー

バルチモアのLR

人口50万ぐらいの都市では積極的にLRを導入し始めた。 LRは様々な面から地下鉄などのシステムに比べ優れている。まず工期が大幅に短いという事。LAの地下鉄は10年以上掛かってようやく現在の姿となった。 これでは交通渋滞が深刻な都市では長すぎる。 つぎに建設費が大幅に安く上がるということだ。 道幅の広い道の真ん中にLRの軌道を作ればいいだけで、場所によっては地下鉄の1/10以下になる事もある。建設費が高くついても利用客が多ければペイできるのだが、人口50万程度ではペイする事は不可能で、営業距離を伸ばす事ができないから余計利用者が増えなくなってしまう。LAの地下鉄も3路線のうちLRタイプのもが2路線あるのは、まさに早く安く作らなければならなっかった証拠だ。 それにLRは地下鉄に比べより面をカバーできるので、地域経済にも大きく貢献するのが魅力だ。

LAグリーンラインは、すべてのシステムを住友商事が一括で請け負った。

全米の都市鉄道でもう一つ早急に導入が計画されているのが、都市間輸送を担う、高速鉄道だ。アメリカではAMTRAK−アメリカ旅客鉄道公社と呼ばれる鉄道会社が都市間輸送を担ってはいるが、これまたスピードは遅く時間 通りでなく、しょっちゅう脱線・事故を繰り返している。 ヨーロッパ・日本では航空旅客対鉄道旅客が良い勝負になっているが、しかしアメリカでは一方的な航空旅客勝ちだ。 高速鉄道では対航空旅客に対する戦略がしっかり確立していて、時速250−300キロ以上では航空旅客1時間から1時間半の距離に勝てる、という。 確かにAMTRAKノースイーストコリドーと呼ばれるワシントンDC−NY−ボストン路線を見ればなっとくできる。 AMTRAKの収益の8割がこの路線の収益なのだが、DC−NY間は最速のメトロライナーでも3時間半かかる。 しかし飛行機では50分だ。 旅客の割合は6対1で、これでは勝負はやる前からわかっている。 なにせAMTRAKメトロライナーの最高速度は220キロで、しかも軌道が悪いため最高速度が出せる距離はたった30マイル程だ。 東海岸では新規に高速鉄道の軌道をつくってもロングランでみれば、ペイできると思うのだが。 またはフランスのTGVやドイツのICEのように軌道を改良に改良を加えれば鉄道圧勝はできるはずだが。

今でも現役のメトロライナー

AMTRAKもTGVを輸入、対航空勝負にでる

アメリカ各地で高速鉄道計画が盛んに出てきた事によって、日本にとっては大きなビジネスチャンスなのだが、日本勢が勝負に出ているようには思えない。AMTRAKが高速鉄道を導入計画を発表した時、トライアルに参加したのはドイツ とスウェーデンだけだった。 実際にドイツのICEが輸入され1編成がトライアルを東海岸路線をおこなっていた。 このとき参加入札したのは、ドイツ、フランス、スウェーデンだけだった。 全米では、東海岸をはじめ、アトランタエリア、シカゴエリア、ダラスーヒューストン、サンフランシスコーロサンジェルスーラスベガス、オーランドーマイアミなど計画が盛りだくさん である。 日本は高速鉄道の分野では唯一オリジナルな世界一の技術を持っているためAMTRAKのトライアルでも、新幹線の姿が見えなかったのは非常に残念だ。 それに技術、大量輸送、安全性という点ではフランス、ドイツは日本には追随できない。 日本は マーケティングが下手なだけだ。日本がこの分野で世界1なのだから、今アメリカが懸念している交通問題、とくに都市鉄道では日本が協力することでかなり解決するはずだが。

フランスのTGV、2001年5月に1067キロを3時間29分で走破する記録を樹立

様々な種類のTGV. 鉄道のエアバスを目指す、フランス・スペイン・イタリア・オランダ連合

2階建てTGV 弱点の大量輸送を強化

 

 

正面衝突をしたTGV

脱線するTGV.こんな事は新幹線では35年近く経つ今でも起こった事が無い。

おわり

Sep 2002

 

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