Rep Journal, August 2002

今回は、全米で話題になった少女誘拐殺人事件におけるアンバーアラートの効果についてリポートしてみたい。

サマンサ ラニオン(6歳)は、7月15日夕方自宅前で友達と遊んでいるところを何者かによって誘拐され、その数日後に遺体で発見された。 事件的には世界中で起こっている普通の誘拐殺人事件ではあるが、その事件の取り締まりにあたって地元自治体及びカリフォルニア州ではアンバーアラートを発動、残念ながら被害者を生存している状態では発見することはできなかったが、犯人を数日後に検挙することできた。この成果はアンバーアラートによるものが多い。

誘拐され殺害されたサマンサ(右)と容疑者像

では具体的にアンバーアラートとはどういうことなのだろうか。 アンバーアラートとは子供の誘拐および行方不明に対する初動警戒プログラムのことで、1996年テキサス州アーリントンで当時9歳のアンバーヘイガーマンが誘拐殺害された事件で、自治体、警察、及び Mediaは様々な事をこの事件から学んだ。まずは、各警察機関がまちまちな管轄のため機動的に動けなっかたこと。Mediaに誘拐のことが連絡されるのが非常に遅く効果的な活用ができなかった、など挙げていけばきりがないが、この手の事件は全米でかなりの頻度で起こっているため、早急に何らかの対処をする必要があった。 そこで、FBI、州警察、郡警察、自治体、Media,大学研究機関などが共同で初動警戒プログラムをシステム化することになった。誘拐には幾つかの特徴がある。A)親権などをめぐるもの。 B)身代金目的のもの C)性的いたずらなどの目的のもの。 これらの誘拐のパターンのなかでも前者2つは殺人に結びつくケースは比較的に少ない。しかし最後のものは犯罪が起こってから数時間内に被害者を殺してしまうパターンが統計上最も多く、仮に被害者が生存して救助されても、被害者のその後の人生の中でかなりのトラウマになるケースがもっとも高いため、何かしらの抑止が必要でもあった。  

アンバーアラートは次のクライテリアを元に発動される。A)子供が特定の年齢以下であること。ここでの特定とは、13歳以下。 B)警察および当局が子供が誘拐されたと認識していること。 C)警察及び当局が子供の生命が危機的な状況と認識していること。  まず被害者家族が警察に連絡をすると、数分から数十分以内にアンバーアラートが発動、ラジオ、テレビなどのMediaはニュースの時間如何にかかわらず、緊急ニュースを流し、一般住民に手助けを求める この際に目撃情報も連絡するように呼びかける。これはアメリカでは自動車の運転中95%のドライバーがラジオを聴いていること、誘拐の95%が自動車を使うことで、非常に効果がある。 実際緊急ニュース発動後、自分の前の車が犯人の自動車の特徴にそっくりで、ドライバーも特徴そのものだと、携帯電話を使って、警察に連絡、容疑者確保に結びつた例が多数報告されている。これらの場合被害者は安全に確保された。 また誘拐後数分以内であれば、半径10キロ以内に緊急警戒網を張れるため検挙に結びつきやすいわけだ。

警察、Media、自治体の協力関係は容疑者検挙を短時間化させた。

僻地でも、衛星電話を使って機動的だ。

これらの協力関係で意外なのが大学の研究者達の存在だ。一見研究者たちは犯罪解決には無縁のようだが、実は大きな役割を果たしている。誘拐犯罪では、精神心理学、精神医学、社会学、犯罪学などの学者たちによって犯罪を早く解決するために様々な要素を含んでいる。目撃情報や犯罪の特徴を利用して、犯人像をプロファイリング 検挙に大きく貢献している。 彼ら研究者達は、アンバーアラートが発動されると最寄の警察コマンドポストに集まり基礎情報から多角的な可能性を探る。

日本では警察庁および各都道府県の県警しか存在しないが、アメリカでは様々なレベルでの警察機関が存在する。FBI−連邦捜査局を筆頭に、州警察、郡警察、市警察、州保安官ーシェリフ、ハイウェイパトロール、パークポリス、エアポートポリス、シークレットサービス、しまいにはポスタルポリスと呼ばれる、郵便物をもとにした犯罪を取り締まる機関まであるのだ。 しかしながらこれらの機関は管轄が複雑に入り組んでいて誘拐も単純なものなら良いが、州を越境するもの、薬物などが絡んでくる場合では管轄権が複雑になって、捜査が思うように進まない事がままあった。 しかしながらこのアンバーアラートにより、より管轄権がはっきりする事になった。最高管轄権は地元警察、そして同レベルでFBI・州警察およびシェリフが請け負う事になった。

捜査には郡警察をはじめパークポリスも出動

サマンサ誘拐事件では、FBI・郡警察・シェリフの連携は大変良かった。

 

同じような年齢の娘を持つシェリフのチーフは感情のあまり犯人にむけて ”今のうちに良く寝ておけ、良いものも良く食っておけ、なぜならお前は捕まったら、これらの権利は一生与えられないからだ” 

サマンサ誘拐発生後数十分でFBIおよび研究者たちのプロファイリングがはっきりしてきた、これは直ちにテレビやラジオに流されもの凄い数の情報が寄せられた。プロファイリングでは、1)独り者で家族と暮らしている。2)犯人は25−45歳ぐらいである。3)性的ないたずらを目的としている。4)地の利がある。5)メキシコに逃亡する恐れがある。6)感情に問題があるかもしれない。などなど。 これらは誘拐発生時サマンサと一緒に遊んでいた友達からの目撃情報を基にしていて、容疑者逮捕後プロファイリングにまったくあてはまる正確さだった。また当局では事件発生後1時間で容疑者をかなりの数に絞り込んでいたらしい。

 

残念ながら遺体となって発見されるサマンサ

殺害されたと知ってサマンサ宅に集まってきた近所の人たち

必死の捜索にもかかわらずサマンサは遺体となって30マイルほど離れた山中から発見された。しかしFBIたちのプロファイリングは更に進み、容疑者は24時間以内に同じような犯罪を繰り返すとした事から、市民たちは必死に近所の怪しい人たち(プロファイリングにあてはまる人)を探した。結果容疑者を逮捕する事に成功。発表された容疑者の写真はプロファイリングそのもので、目撃情報もそっくりだった。

容疑者 

インタビューを受ける犯人の母親。

しかもアンバーアラートはこれらの誘拐連れ去りを抑止する効果もかなりある。なにせ、犯人にとってみれば敵は警察だけでなく隣近所一般市民にまで広がり、いったん行動を始めると、隠れ場所がなくなってしまうからだ。誘拐をすればイコール死刑。これはかなりの抑止はありそうだ。

日本もこの手の犯罪が増えてきている、特にプロファイリングのように、25−45歳前後の男が年少者の性的いたずらを目的とした誘拐連れ去り事件がニュースでもよく聞かれるようになった。日本ではMediaをとおしての協力は得られないだろうが、一般市民の協力は得られるだろう。特に日本では携帯電話がアメリカより発達しているので、これを使った防犯システムの構築はそれほど難しくはないのではないだろうか。 また特に犯罪学が進んでいない日本においてはこれらアメリカでおこなわれている犯罪をしっかり研究する事によってそれらを抑止する事もできるのではないだろうか。

おわり

Aug 2002 Issue

 

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