Rep. Journal, May 2007

Issued  April 2007

 

ヴァージニア州ブラックスバーグにあるヴァージニア工科大学の校内で16日朝に起きた銃の乱射事件の死者は犯人を含め33人に拡大した。犯人の男、韓国人チョ・スンヒ容疑者は直後に自殺したとみられている。負傷者も多数に上り、高校・大学を含め過去に起きた銃乱射では米史上最悪の事件となった。



ニューヨーク・タイムズによると、事件は校内の宿舎と校舎で起き、被害者の多くは学生。当初犯人は1人で、銃を乱射した後自殺したと思われるが、頭部の損傷が激しく、捜査当局は事件直後、氏名を特定できなかった。しかしその後、捜査当局は韓国国籍のチョ・スンヒ容疑者23歳の犯行だったと発表。 米国の永住権を持つチョ容疑者はヴァージニア州センタービル在住で、同大英文学科4年生に在籍中だったとのことだ。

チョ容疑者は小学校3年生の1992年、両親とともに米国に移住し永住権を取得した。現在チョ容疑者の両親はヴァージニア工科大学から自動車で3時間半ほど離れたところにあるヴァージニア州フェアファクス郡・センタービルに住んでおり、クリーニング業を営んでいると現地メディアは伝えている。センタービルは、韓国系住民 5万人程度が居住するDC近郊の韓国人密集地域である。チョ容疑者の家族は移民する前、ソウルで暮らしていた。

チョ容疑者と同じ学科に通う韓国人学生らによれば、チョ容疑者は周囲にうまくなじめず、一人でいることが多かったという。韓国人学生は、通常韓国人学生会や教会を通じて互いに顔見知りになるが、チョ容疑者は韓国人社会でもほとんど知られていなかった。そのためか、韓国人学生会が把握している韓国人学生名簿にもチョ容疑者は載っていなかった という。 ヴァー ジニア工科大学スポークスマンはチョ容疑者は孤立した生活を送っていたようで、容疑者に関する情報を把握するのに苦労していると話している。

チョ・スンヒ容疑者が犯行に使用した銃は2種類。一つは9ミリ口径、もう一つは22口径の自動拳銃。

 チョ容疑者は3月13日、ヴァージニア州ローノークの銃器店で9ミリ口径の拳銃と弾丸1箱(50発入り)を購入した。価格は571ドル。

 容疑者の銃購入は、ヴァージニア州の州法に違反しておらず、合法取引だったという。ヴァージニア州では銃を購入する際、身分を証明できるものを二つ提示し、店内のコンピューターで身分照会を行う。当局によると、チョ容疑者は13日に銃を購入した際、運転免許と小切手帳、永住権証明書を提示したという。 しかし、22口径の拳銃をいつどこで購入したのかは判明していない。バージニア州の州法では、30日間に1つだけしか銃器を購入することができない為だ。


 ここまでが判っている事実関係である。

事件直後からのアメリカメディアの対応だが、3大ネットワークでは、直後から速報で報道をはじめ、事件後はイヴニングニュースでは異例の1−2時間枠、プライムタイムでの特番、そしてモーニングニュースでの特集を組んでいた。

アメリカの政府庁舎等アメリカ国旗が掲げているところは、今週一杯半旗になる。また事件後、大統領もヴァージニア工科大を訪れている。

米国史上最悪の銃乱射事件を引き起こした犯人が韓国人との事実が広く知られると、在米韓国人コミュニティー・留学生会等は大きな衝撃を受けている。留学生全体が犯罪者と見られないか非常に心配している。当初一部 メディアは犯人が中国人留学生と報じていたことから少し安心していた韓国人留学生たちだが、犯人が韓国人という意外なニュースが流れると、大きな衝撃を受けたようだ。 しかし時間が経つにつれ、衝撃は韓国人社会だけでなく、アジア系コミュニティー全体に波及を見せている。

アメリカの多くの大学では、アジア系の留学生では韓国人が群を抜いており、これは韓国人が多く住む南カリフォルニアだけでなく、ニューヨーク、DCを含めアメリカ全土に及んでいるため今後の影響が心配される。とくに 留学生だけでなく、多くの小規模商店は韓国人経営が多く、ロサンジェルスでの大暴動の時も標的とされるなど、今回の一連の事件の報復を恐れる韓国人は多い。

今回の事件が、銃規制をめぐる国内の論議を再燃させるのは必至である。ただし主張を強めているのは一部の銃規制派だけで、規制反対派は沈黙して成り行きを見守っている。ロサンゼルス・タイムズによると、民主、共和両党の議員らは犠牲者とその家族に哀悼の意を表明しているが、銃規制に関する発言は避けている。 しかし時間が経つにつれ、銃の規制に問題が無かったか、という声が多く出始めている。銃規制には一貫して反対するブッシュ大統領は、事件を受けて学校は神聖な学びの場であるべきだ。その聖域が侵されたとき、米国のすべての教室、すべての社会に多大な影響を与えると追悼の意を表明したものの、銃規制論議には触れなかった。

民主党有力者であるハリー・リード上院・院内総務、ナンシー・ペロシー下院議長も、事件について悲しみを表明したが、銃規制については沈黙を守っている。民主党は従来、銃規制の強化を主張してきたが、近年は狩猟愛好者や銃規制反対派の支持獲得を狙い、表立った銃規制支持はしていない。 政治的思惑はともかく、今回の事件に対する反応が控えめなのは、それぞれの発言の時点で犯人の身元、銃の入手経路など、事件に関する確かな情報が不足していたという理由もあるようだ。

また 大統領は米国民には武器を携行する権利があると信じている、と事件から数時間後の16日午後ホワイトハウスで、ペリーノ大統領副報道官はブッシュ大統領の哀悼コメントを読み上げるそばから、銃規制の強化に慎重な政権の立場をはっきり 念を押した。

実際、銃が簡単に購入できる米国では銃犯罪が後を絶たない。最近では昨年10月、ペンシルヴェニア・アーミッシュの学校で少女5人が射殺される事件があったばかり。こうした事件にもかかわらず、米国で銃規制が進まないばかりか、規制緩和の動きさえ見られるのは、銃規制に反対する全米ライフル協会・NRA・会員数おおよそ4百万人の存在がある為である。NRAは莫大な政治献金をテコに政界に太いパイプを持ち、ブッシュ政権とも親密な関係にあるほか、昨年、散弾銃誤射事件を起こしたチェイニー副大統領は大の狩猟マニアだ。 2000年以降、NRAは銃の携行や自己防衛のための銃使用を可能にする州レベルの法整備に力を入れており、カンザス、ネブラスカ各州でこうした立法を次々と成功させている。

そして今回の銃撃事件が次期大統領選に与える影響も大きく、候補者の銃規制に対する態度・発言は今後注目を集めそうだ。民主党の候補を目指すヒラリー・クリントン、オバマ両上院議員のいずれも銃規制に積極的。 民主党だけでなく、NRA支持者が多い共和党内からも一定の所持は認めつつ、なにかしろのテストなどによって、所持を選別する必要があると考えていると、たとえばジュリアーニ元ニューヨーク市長もそのような主張をしている。

今回の事件が短時間で多数の死傷者を出したことは、銃による犯罪であるが故であるのは間違いない。しかしメディアでは、仮にチョ容疑者が銃を入手していなくても、結果的には生徒を殺傷する事件は起きていたと報道をしている。メディアでは、銃規制以外に、どうして彼がそこまでの計画性のある犯行に及んだのかと言う、動機面の解明が重要で、社会としては銃規制以外に再びこのような惨劇が起こらないよう 社会を教育をしていく重要性をことさら訴えている。

そして最後に、我々は911テロ以降、既に新しい時代に暮らしていると言うことを再び強く認識しなければならない。今回の銃撃事件を、銃撃事件と位置づけるか、それともテロと位置づけるかは我々自身の認識一つ である。ただ今後、模倣犯的な犯行や、海外テログループによる今回ののようなオープンキャンパスを狙った犯行は再び起きる可能性が高い。

おわり

PS 18日、ニューヨークのメディアNBCに、チョ容疑者が送ったとみられる殺人マニフェストが送られてきた。これは犯行の最中に郵便箱に投函されていたようである。内容は同日のイヴニングニュースを初め、メディアでは速報で流した。犯行・声明内容は韓国映画オールドボーイを彷彿させるような写真と声明ヴィデオが約45分間にわってチェ容疑者を映し出している。この犯行マニフェストを見ると、今回一連事件は明らかに復讐という名のテロであることがわかる。

 

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