Rep. Journal, April 2007

Issued  March 2007

 

久々のジャーナルである。最近面白いというか非常に興味深いビジネスフォーラムに行って来た。そのフォーラムはウォールストリートジャーナルが主催となったものなのだが、その中でこれからのエネルギー、安全保障、ビジネスなど様々な討論が行なわれた。しかし自分が最も興味深く思ったのは、フォーラムの最後で新刊・ビジネスブックの紹介が行なわれた際に、"The Starfish and  the Spider"という本が紹介されたことだ。筆者が紹介され、その本と現在進行形におけるビジネスを対比する形で本が紹介されていったのだが、そのStarfish−ヒトデとSpider−クモという生き物を文明・社会に例えることによって20世紀と21世紀との明確な違いを見出せることに気がついた。

よく一般に20世紀を”戦いの世紀”とか理念の世紀・製造業の世紀と言われてきた。そして21世紀とは、と質問されるとあまりに漠然としていて、明確になぞらえることが出来る人はそう多くなかった。21世紀は宗教対立の時代、とか21世紀は文明の衝突の時代、など言われているが、しかしそれらはあまりにもネガティブ要素が多く、考え方によっては人類消滅・あるいは崩壊の世紀ととらわれても仕方がないような言い方だ。そのため、多くの人は21世紀を良い世紀になるであろうと考える人があまりにも少ないのが現状である。

このウォールストリートジャーナルのフォーラムで紹介していた本のタイトルは、"The Starfish and the Spider"はそのまま"ヒトデとクモ"というタイトルになるのだが、ビジネスなどをそれらのどちらかに分類することによって、日本でよくいわゆる勝者・敗者というカテゴリーから置き換えることが出来る。 アメリカでは所得差の拡大という言い方はあるが、あまり勝者ー敗者という言い方はしない。 ヒトデとクモという分類法は人間の寿命ほどの短い時間を、勝ち負けで綴るネガティヴなラベル方法から変えられるだろう。

ヒトデは5本足だが、中枢において物事を決めたりコントロールする器官が存在しない。また5本足あるうちの、例えば1本が他の生き物に食べられたり、何かアクシデントによって失うことがあっても、その後、ひとりでに足が生えてくる。つまり自己再生型である。

この自己再生型に対になるのが、いわゆるクモ型で、しっかりとしたテリトリーが存在し、クモには物事を決定したりする中枢器官が存在する。その為、もし中枢器官が破壊されたり欠如したりすればクモは存在できなくなる。

何がそんなに興味深いかと言えば、20世紀をどちらかと言えばクモ型の世紀、そして21世紀はヒトデ型の世紀と置き換えることによって、容易に過去に起こったことや現在進行形に行なわれていること、また近い将来起こるであろう事をこれらに置き換えることが出来、しかも容易にその背景を理解することが出来るからだ。

その代表例が、20世紀に起こった冷戦構造である。

冷戦はモデルに例えるとクモ型で、それぞれのクモには中枢器官が存在した、アメリカとソ連である。中枢・決定機関はホワイトハウスとクレムリンだ。そしてテリトリーはわかりやすく例えれば、 彼等のクモの巣である。両者はクモの巣を拡大してきたが。クモの巣というのは大きくなればなるほど、末端から末端への移動距離が長くなる。長くなれば移動するクモのエネルギーは消耗される。しかし巣を広げることによって、捕食される餌は増える可能性がある。そのため、クモ自身を支えるために巣を拡大、しかし拡大するうちに、膨大な移動エネルギーが生じ、捕食も思ったほど得られなくなってしまった。結果ソ連グモは、その大きい体を自らが支えられなくなり、巣の部分、部分を他のクモに譲ることになったのである。これがソ連型社会主義の崩壊だ。しかし生き残っている一方のクモ、アメリカグモもテリトリーを拡大しすぎたお陰で、本体の体力は著しく弱まり、手下であった欧州グモ達にテリトリーを分け与えることになった。...これが判りやすい冷戦ー冷戦終焉-EUの誕生の構造である。

しかしテリトリーを部下達に分け与え、自身の体力も大分回復してきた頃に現われたのが、今まで戦ったことのない相手、中枢器官が存在しない敵”ヒトデ”である。このヒトデは中東を根城としているが、 アメリカの成長の肥やしとも言えるエネルギーを牛耳っており、アメリカグモの成長には不安定・不確定要素がありすぎた。そこでアメリカグモはこの拠点を破壊すべく自身でヒトデの根城に攻め入った。しかしこの敵は、やっつけても、やっつけても向かってくる。 破壊したはずの手足は、破壊と共にすぐに成長を始め、再生してしまう。そしてクモの方の体力がヒトデよりも多く消耗し始めている。...これが現在進行形で中東で行なわれていることである。

現在進行形で行なわれているイラクでのテロとの戦いは、ヒトデとクモの戦いと理解すれば非常に理解しやすい。クモ型であるアメリカは、軍隊・政治システムという明らかな中枢器官が存在するのに対し、テロリストサイドには中枢器官が存在しない。その証拠が、もしアメリカ軍がアル・カイダの中心と思われているオサマ・ビンラディンを殺害してもテロ・破壊行為は収まらない。また誰かがそこのポジションを埋めるだけである。末端のテロリストを殺しても、殺してもテロは収まらず、被害は拡大し、アメリカの勢力は縮まる一方である。そして人的被害が著しくなるアメリカ側は そのテリトリーから撤退せざるを得なくなるのである。

  

何も外交や政治の世界だけでなく、ビジネスに世界においても、この両者の戦いが現在進行形で行なわれている。よく20世紀は製造業の時代と呼ばれるが、この製造業は21世紀になってその勢いが著しく落ちている。

著しく勢いの落ちているビジネスをクモ型となぞらえるとこれまた理解しやすい。クモ型であるビジネスも意思決定機関・中枢器官が正常に機能している時はさほど問題にならないが、この中枢器官がその機能を果たせなくなると、たちまちに組織は崩壊、若しくは彼等の作る製品は劣悪な物になるのである。そもそも時代を経るごとに市場を拡大していかないと生き残れないこれらクモ型にとっては、クモ型で有り続けることは、冷戦同様非常に経費・コストが掛かるのである。そしそれらの経費が遂には利益を上回り、企業が存続できなくなるのだ。若しくは中枢器官が、いい加減な指示・決定をした場合、企業の存続も難しくなる。最近日本では、不二家や雪印などがこれに該当する。

しかしいくら莫大な利益を上げようとも、経費・コストがかかる20世紀・クモ型ビジネスにはもう限界が見え始めてきている。

例えば、最近製造業のトヨタとGMを比較に出すことは多いと思う。しかし空前の利益を上げているトヨタに対し空前の赤字を出してるGM、両者はクモ型ビジネスの典型でありながら、なぜそうも違うのか?それは意思決定機関である中枢器官の違いである。その違いが製品に反映した結果だ。しかしそのトヨタでさえ、いつかは自らの大きい体を支えることは出来なくなる。それは意思決定機関が利益を拡大しているときと同じ決定機関ではなくなるからだ。人が変われば決定機関も変わるのである。ソ連グモが崩壊したように、いつ何時どのような理由でトヨタグモも崩壊する可能性はないとは言えない。そしてそれを事前に予想するのは難しい。

それを裏付け、尚且つヒトデ型行動・思想を世界中で広めさせているのが、今、世界中に広がる所得差の拡大と少子化である。これらもヒトデとクモとに分類することによって理解が容易になる。

いままで、これら所得差拡大や少子化を厳密にしかも容易に説明できた人は、草々いなかったと思う。しかも仮に説明できても、あまりにもテクニカルな言葉が多く、全体を理解する前に、語彙を理解しなければならなかった。

所得差拡大において、その両者のうち前者における人々は、基本的に市場拡大路線に乗っている人、違法と判って利益を上げている人、若しくは富を先代から受け継いだ人である。しかしこれらの人は、その得た体力を維持するために、さらに拡大しなければその体力を維持できなくなる。しかし経費・コストも相応に上がってくるので、遂にはその体力を支えられなくなるのだ。金持ちの消費は大きいが、浪費も非常に大きい と言うことである。企業で言えばライヴドアーが良い例だろうか。自らの体力を維持するために違法と判っていることですらやらなければ自らを維持することが出来なくな ってしまった。

ではどうして少子化が進んでいるかと言えば、それは単に所得が低いからからだけではなく。種を残すこと、家族を維持することがどれだけ経費が掛かるか判っているからであって、最近では意思決定機関である中枢器官が女性の社会進出によって複数存在することが挙げられる。判りやすく言えば、クモの巣に同時に2匹のクモは存在できないのだ。これが離婚率が増えている理由であり、女性社会進出が始まれば、雇用状況が大きく変わり 、一世帯あたりの意思決定機関が倍に増える、そして就労というパイがそのペース分大きくならない以上、パイを巡って一人当たりのパイが小さくなる、つまり所得の縮小が全体で起きる。しかも企業の成長ペースを越え、世界中で人口が増え 、女性が社会進出しているためパイは必然的に小さくなるのである。

その様に所得が縮小し、半比例するように女性社会進出が著しくなれば、自らの身を切っても次世代を残そうとする種はほとんどいなくなる。クモ型で有り続けるには、経費が掛かりすぎるのをよく理解しているため、若い世代はヒトデ型に考え方が移り始めてきている。自分が死んでも社会は何ら変わらず有り続けるというヒトデ型の発想である。そしてヒトデ型になるには、生きている間中は経費の掛からない生活に徹する。つまり自動車はいらないし、 服は最低限あればいいし、金のかかり、前途が不明な女・男友達は要らないという発想になる。この若いヒトデ型の消費パターンに美味く乗った企業は利益を上げられるが、そうでない企業は存続が問われるようになる。いま世界中で拡大を続けている企業の多くは、その様なヒトデ型パターンをよく理解している ようだ。

最近爆発的な勢いで拡大しているビジネスはヒトデ型若しくはハイブリッド型だけである。ハイブリッド型は、中枢器官は存在するものの、手足は自己再生型で、生き物になぞらえると、イカやたこに近い生き物ということになる。企業で言うならば、マイクロソフト・スカイプ・Wikipediaだろう。サーヴィスで言えばいわゆるソーシャルネットワークなどである。ただ現在完全なヒトデ型のビジネスモデルはまだ存在していない。ハイブリッド型なら、最近よくWeb2.0という言われ方があるが、これはモデルが漠然としないが、イカ・たこなどのハイブリッド型モデルと理解すれば、理解しやすい。 そして恐らく今世紀は、ヒトデ型若しくはクモ型とのハイブリッドである、イカ・たこ型しかビジネスだけでなく、文明そのものが生き残れないのかもしれない。

おわり

 

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