Rep. Journal, December 2006

Issued  December 2006

 

O157は、体内に入ってから3日から9日後に、症状が出てくる。主な症状は、下痢、腹痛、発熱だが、人によっては頭痛やのどの痛みなどカゼのような症状のときもある。
 O157は、腸の組織を侵して激しい痛みと出血性下痢を起こし、体内に入ったO157そのものは抗生物質で退治できるが、菌が死ぬ時に赤痢菌と似た毒素(ベロ毒素)を出し、腎臓や脳に大きな障害をもたらすことがある。
 O157のもう一つの特徴は、少量の菌で感染し、発病するということだ。他の食中毒菌(腸炎ビブリオなど)による食中毒は、発病に100万個以上の菌が必要と言われるが、O157は数百個ほどでも発症する。

誰もが数年に一回程度は、食べ物に当たったなどの理由で腹痛などの症状を味わったことがあるに違いない。腹痛・嘔吐等非常に辛く、症状の出ている時はまさに藁おも摑む思いだ。

今アメリカでは食の安全に対し疑問符が投げかけられている。それは今まで安全であろうと思われてきた、ファーストフードや一般スーパーで販売されてきた食材が細菌に感染し、多くの消費者が感染し ているからだ。

一般的に見て、アメリカを含む先進国の食への安全に対する意識は非常に高い。一部には、日本が食に対する安全の意識が一番高いと思っている人もいるが、そんなことは全くなく。先進国(先進7カ国)では、全て 国で食の安全に対する意識は同様に高い。しかしその様な食の安全に対する意識が高いにもかかわらず、細菌・雑菌による食中毒が後を絶たない。絶たないどころか、こ 10−20年ではむしろ増える傾向にある。

食の安全に対する意識が薄れてきているのであろうか?それとも何か他の原因があるのだろうか?

今まで、スーパーで食材を買い、それらを調理し食べていた、または自分の気に入っているレストランで食事をしていた、と言う何気ない行動で食中毒になったと言う感覚は薄かった。大抵は、風邪でも引いたのであろうとか、単に体調が悪かったのであろうと考える人がほとんどであったであろう。まさかスーパーで売られている野菜に細菌が付着していたとか、ファーストフードで販売されているハンバーガーの野菜に細菌が付着していたとは思わなかったに違いない。思わなかったと言うより、これらスーパーやファーストフードチェーンは世界規模の会社なので信頼していた、と言うのが現状であったに違いない。

しかしここ10年の間に、これら信頼は崩れつつある。理由は、調理業者、ここで言う、ファーストフード店やスーパーの管理体制がずさんなったのではなく、生産業者・加工業者の衛生概念、そして物流の進歩が原因しているようである。

最近アメリカでは、南カリフォルニアほうれん草によるO157、そしてファーストフードチェーン・タコベルでのO157と食の安全、とりわけ先に述べた、世界企業によるO157の感染が相次いでいる。

      

今年9月には、全米各地で病原性大腸菌O157による食中毒患者が発生し、20州で計約100人が下痢や吐き気などの症状を訴え、1人が死亡した。FDAは、カリフォルニア州の自然食品会社などから出荷された袋詰めのほうれん草が感染源と断定。食品会社は出荷品の回収を決めた。AP通信によると、ウィスコンシン州で20人が症状を訴え、うち1人が死亡した。このほかニューヨーク州などでも感染が確認され、被害はさらに拡大した。FDAによると、8月25日に最初の感染例が報告され、その後各地に拡大したことから9月14日、全米に警告を出した。感染源のほうれん草を出荷した食品会社が複数の可能性もあり、全米の大手スーパーで店頭から、ほうれん草を撤去するなどの動きが広がっている。 最終的には20以上の州で感染を確認。全米で157人が感染により死亡した。

ただ死者157人と言うことは、その数字の裏で10倍近くの人が病院等医療機関に入院していると考えるべきである。またその数倍近くの人が、症状が軽い腹痛・下痢を起こしていると考えられる。これら症状の軽い人々は感染している とは知らない人々だ。

1993年にはアメリカ西部で展開するファーストフードチェーン、ジャックインザボックスで生焼けのハンバーガーによるO157が発生。同年にはシアトル近郊で全米チェーンレストラン、シィズラーでやはりO157が発生、死者を出している。そして最近では全米ファーストフードチェーンのタコベルが、食材のねぎからO157が感染、現在でも感染源を特定すべく調査が続けられている。

しかしこれらO157感染ではある特徴がある。全米で90年代に相次いだO157感染では、調理加工現場が感染の原因であったのに対し、最近、少なからず2000年以降のO157発生を見ると、調理現場で感染したのではなく、食材の生産地で感染していることである。これは90年代に相次いだO157やサルモネラと言った食中毒を発生される細菌は、ずさんな調理加工が原因していた。

日本においてもO157の発生は後を絶たない。1996年大阪は堺市で学校給食による学童の集団感染が発生。医療機関での確認でおおよそ8千人の感染を確認、3人が死亡している。このときはカイワレ大根がO157の感染に関与があるとみられたが、カイワレ大根からO157は検出されず、汚染・感染源は特定されなかった。2005年には香川県の公営老人施設でO157の集団感染が発生。このときは施設の給食の浅漬けからO157が検出されたが、やはり汚染・感染原因の究明には至らなかった。そして同年、大阪は高槻の自動福祉施設でO157が発生。児童が死亡した。...などなど日本でも食材によるO157の感染が後を絶たない。

しかし日本の場合、どのケースも調理場で感染したのか、流通・加工段階で感染したのか、それとも生産段階で汚染・感染されたのかはっきりしない。

そして日本においては、1995-2000年の5年間を見ると、食中毒事件の件数は557件(1995年)〜3,010件(1998年)で、平均1,188件。平成9年以降、2〜3倍に急増しているが、これは 大阪・堺市のカイワレO157食中毒事件以降、社会全体として食中毒に関する関心が高まったためで、軽症のうちに病院に行く人が増えたことを反映したものと考えられている。逆に言えば、統計から漏れている軽症の患者がこれまでもかなりいたということでもある。統計に現れている患者数は20,933人(1997年)〜46,327人(1996人)で、年あたり平均34,853人。この5年間では平均で、 1年で9人死亡、人口10万人あたり33人が罹患している。最近公開された平成13年(2001年)の確定値では、事件数1,928件、患者数25,862名(一件あたりの患者数は13.4人)。死亡者4名のうち、3名がふぐ、1名がきのこの中毒で、いずれも家庭で調理した事例である 。

食中毒の発生件数を見ると飲食店・レストランと家庭がおおよそ2割ずつを占めている(1995-2000年平均)学校・病院の給食、あるいは製造所や販売所は、事件件数で見ると全体の1-2%程度。ただし、製造所や給食で製造・調理された食品は、一度に多数の人に供されるため、一度事件が起こると大規模な事件を引き起こしがちである。2001年の原因施設別統計では、一事件あたりの患者数が家庭では3.3人なのに対し、旅館 ・ホテルや給食関係では40人、製造所や仕出し屋では60人程度と、家庭の15-20倍もの被害者が一度の事件で発生していることがわかる。

  

日本での原因食材については、半数以上のケースで特定できていない。欧米諸国では、乳肉および野菜を原因とする食中毒事例が多いのだが、日本では食中毒の原因食材(加工品を含む。1995-2000年平均)の2割を魚介類が占めている。肉・卵・牛乳は全部合わせても4%程度で、野菜や調理済食品と大差ない。2001年の統計では全体の56.7%が原因不明であり、原因が判明したケースの24%が魚介関係。次に多いのが調理済み食品で全体の10%。肉と野菜は同じぐらいで、全体の7%。卵が4%となっている。意外にも野菜の方が卵よりも事件数は多い。

このデータは非常に興味深く、欧米においても、最近ではタマゴや乳肉からO157に感染した例より、野菜によって感染した例が急激に増えている。例のタコベルやカリフォルニアでの事件でも感染元は野菜であった。感染数においても、日本の場合は家庭で調理されたものに比べ、仕出し、給食、外食産業での感染は15−20倍も高いと言う事実はアメリカのものと似ている。しかしアメリカの場合比率はおおよそ1.2:1の割合でファーストフードを含めた大手外食産業が小規模飲食店・家庭を上まっている。このアメリカの例では、外食産業での食中毒の発生は即訴訟問題に追いやられ企業の存続に直接結び付く為、日本以上に衛生基準が高いのかと思われる。

アメリカでの外食産業での食中毒発生と対応においては、日本とは比較にならない対応の広域さとスピードである。以前ハンバーガーチェーン、バーガーキングへハンバーガーパティを納入しているネブラスカのハドソンフーズ社製造の肉から大腸菌O157が検出したという報告がUSDAの食肉担当官からFDA経由でCDCに入った。CDCは直ちに実体の調査を行い、該当の食肉を使用している企業に対し警告を発表し、同時に汚染された食肉のロットナンバーをインターネットで掲示した。

幸運なことに食中毒が発生したわけではなく、知らせを受けたバーガーキングは直ちにハドソンフードのハンバーガーパティを使用しているハンバーガーの販売を中止した。バーガーキングの米国内7800店の店舗の1650店舗がその影響を受け販売を中止し、その販売中止の店舗のある地域を直ちにメディアに流し、48時間以内に対策を行い、他の牛肉のサプライヤーからハンバーガーパティを確保し販売を開始したのだ。新聞、テレビなどのメディアによる報道に不安を感じる消費者の不安を完全に解消するべく、ハドソンとの取引を停止すると発表した。更に、消費者の不安を完全に断ち切るために全国紙に大規模な広告を何回もうった。そのときの内容は:

  1. バーガーキング社のハンバーガーパティはフレームブロイルと言う炎による直火焼きで、FDA(米国厚生省)の基準に基づいた完全な調理を行っている。

     

  2. 焼き方はフレームブロイルとコンベアーを組み合わせており、熟練していないアルバイトがグリドル上の生焼けのハンバーガーパティを取り出して使用することがなく安全である。

     

  3. この安全な調理システムを維持するために、調理機器の温度を測るのは精度の高いデジタル温度計を使用。

     

  4. 品質管理と従業員教育を徹底している

    店舗のマネージャー、アルバイトは食品の取り扱いと調理に関する厳格なトレーニングを受けている。フランチャイジーオーナーと本社の訓練された2000人に及ぶスタッフは、食材の取り扱い、調理について、全ての商品に対し常に指導、監督を行っている。

     

  5. 食材供給業者の管理の徹底、そして食材はUSDA(米国農務省)によって検査、認定された食品製造工場からのみ購入。

    ハドソンで製造された当社に供給される牛肉製品からは食中毒菌が検出されないにも係わらず、同社の製品を全米の25%に当たるバーガーキング店から回収した(他の製造メーカーから商品が供給されるまで24―48時間かかったが)。これは、消費者の不安を取り除くための会社の姿勢を表す物であり、我々の顧客第一の姿勢を示す物である。

その様な内容を北米バーガーキング社の社長と1520名のフランチャイズオーナ名で全国35紙に掲載した。この迅速な広報体制と広告の見事な組み合わせは、米国のうるさいメディアを感心させ、事件発生後2週間後にはその話題はマスコミから完全に消え去り、消費者に信用されたバーガーキングの売上は殆ど影響を受けなかった。

バーガーキングのO157事件が急速に沈静化した理由は政府の的確な対応と情報公開にもある。牛肉の工場はUSDAにあり、このような事件は直ちにFDA・CDCに報告される。CDCは直ちに事件の調査を開始し、その原因、汚染状況、を把握分析し、その状況と対策をインターネット上で告知した。インターネットではハドソンフードの汚染された肉のパッケージのコードナンバーとその総数まで発表している。この政府機関の迅速な対応と情報公開により消費者はパニックに陥らず、同時にバーガーキング社の発表した対策に安心し、騒ぎは鎮静化に向かった。

しかし残念ながらアメリカでの外食産業でのO157の発生は減ってきているものの、統計全体としては先進国中どこの国でもO157だけでなく様々な種類の細菌によるの食中毒は増えている。

日本においても過去における食中毒の発生件数は年々減少していた。ところが1996年あたりを境に発生件数、被害者、死亡者とも増加に転じている。大阪・堺市の大腸菌O157が原因だと思われるようだが、詳細を調べてみるとO157以外の食中毒事故も増加している。表また病原性大腸菌の食中毒事件が大幅に増加しているだけでなく、サルモネラ、腸炎ビブリオ、カンピロパクターなども増加していることがわかる。サルモネラの汚染も深刻な状況で、病原性大腸菌をはじめとして最近は新型の菌が続々と発生しそれが世界中に蔓延するスピードが速くなってきている。恐らく理由は、物流のスピードが速くなったことだろう。生産地を出発した食材は翌日には消費者へ流通することは当たり前になった。その流通のスピードが速くなった分、汚染された食材の流通も早いと言う事である。それは汚染された食材によって感染が確認されたときには既に他の汚染された食材も消費されたことになり、結果として感染数が増えるのである。そして残念なことに、一度流通された食材を回収することはスピードが故に非常に難しく、感染を減らせないのだ。

いつかは、食の安全などという文言を考えずに、内外を問わずに美味しく食事を楽しめるようになるのだろうか?

おわり

P.S. 昨夜テレヴィでの報道で、タコベルでのO157は、ねぎがO157の発生原因であると当初報じられたが、今度はねぎではないということらしい。感染源と思われたのねぎの検査は最終段階だが、それらからはO157の細菌は結局見つからなかった。日本でのカイワレ大根同様、アメリカでもねぎだけでなく、ファーストフード全体・野菜一般に風評被害がかなり出ている。タコベルでのO157感染の検査は再び振り出しに戻ることになった。(Dec12)

 

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