Rep. Journal, November 2006

Issued  November 2006

 

     

先日行なわれたアメリカ中間選挙は、民主党の圧勝となった。ある程度予想はされていたにはせよ、上・下院とも民主党は過半数となり、下院議長はアメリカ史上初の女性議長となった。またアメリカ各州の州知事選も同時に行なわれたが、こちらも民主党候補が共和党候補を圧倒。やはり民主党候補知事が26州で勝利し、やはり過半数となった。 つまり政権以外の立法府はすべて民主党主導となったのである。

今回の選挙は、単に共和党の敗北と言うだけでなく、今後のブッシュ政権の方針に大きな影響が出るのは必至である。早速、共和党敗北の責任を受けて、国防長官で、イラク・イラン・北朝鮮に対しタカ派で有名なラムズフェルド長官が辞任した。まあ辞任したと言うより、明らかなイラクでの失政を受け、解任されたと言うのが本音のところであろう。ブッシュ政権 初旬、ラムズフェルト国防長官とパウエル国務長官の間にイラク問題では多くの確執が生まれ、パウエル長官の対イラク戦反対意見が政権では少数派となり、事実上ラムズフェルド長官がパウエル長官の更迭を大統領に進言したといわれている。しかしそれから数年後、明らかにパウエル元長官の進言した通り、イラクではアメリカは多大な損害を被り、今度はラムズフェルド長官が更迭された。この更迭を受け、 末端の兵士だけでなく、軍上層部の多くからは喜びの声が挙がっているという。

今回共和党が敗北した理由は幾つもある。例えば、共和党フォーリー議員の猥褻メールスキャンダル、混迷を極めるイラン・北朝鮮問題、泥沼化するイラク、先の見えないテロとの対決、ガソリン高騰、ヘルスケアー、違法移民、環境問題と挙げたらきりがないが、これら多くの問題はブッシュ政権になってから明らかに悪化した問題で、いまやこれら多くの問題はアメリカの国内問題ではなく世界・人類の問題となっ てしまった。

     

共和党議員の猥褻メールは説明するもでもないが、民主党勝利を決定付けた要素の一つは明らかに出口の見えないイラクでの失策を受けてである。 ニュースを見ていても、連日連夜アメリカ兵でイラクで死んでいるのを報道している。戦争なのだから仕方ないとは、ラムズフェルド元長官の言葉だが、毎日のように10人以上がゲリラによる原始的な爆発物によって命をなくしているのだ。またそれら多くの命を落とした兵士達は25歳未満の若い兵士である。アフガニスタンから始まった、テロとの戦いでの特徴は、若い兵士の致死率がおおよそ10%、幹部は1%未満である。今世界中では、就職・戦争・自殺と若い人たちの方が、その親の世代より致死率が高いのは、いくら世界の価値観が変わろうとも考え物である。

今回の民主党の両議会での勝利は、イラク問題について、明らかな方向転換が求められてくるだろう。多くの民主党員は、向こう3−6ヶ月以内に撤退を開始すべきであると言う意見が大多数である。それを受けてか、先日 、超党派によるイラク研究グループが今後の方針について大統領に進言したと言う。メンバーには、先の湾岸戦争を外交面から推し進めた、ジェームズ・ベーカーも含まれている。 具体的な方策は、数週間後に発表される予定である。

また 今回の選挙の結果を受けて混迷するのが予想されるのは何もアメリカだけではない、イギリスも多くの兵士を派兵しているが、アメリカより早く撤兵しなければブレアー政権がもたないとも言われている。アメリカより撤兵が遅れれば、今、主にアメリカ兵に向けられているゲリラ活動がイギリス兵に向けられるからだ。その点日本は、タイミングよく撤退を完了している。

対北朝鮮・イランに目を向ければ、イラク問題でがんじがらめにさせられている分、アメリカは得意の外交・軍事的圧力を直接掛けられないでいた。イラクのせいで、この2カ国に対してはどうしても中国、ロシア、フランス、ドイツなど外国に頼るりざるを得ない状況にあった。またこの第三国による外交の為、事態がなかなか解決する方向には行かず、むしろ状況はアメリカ側関係各国に不利な状況になっている。これはアメリカが第三国に頼りすぎた為に起きたもので、過去にユーゴ・コソボでの国連・NATO軍介入では住民に多大な犠牲を出したことを アメリカは良く覚えているはずだ。つまり国連や第三国を仲介すると、事態が延々と解決できず無駄に時間と機会を逃してしまうと言うものだ。

ところが 民主党は北朝鮮・イラン問題は対話による解決を軸としている。94年の北朝鮮核問題時にも、カーター元大統領を特使として派遣、結果騙され続けられてきた。しかし今回の選挙での圧勝で、ブッシュ政権はもう北朝鮮に対し、金融制裁程度以上 の圧力は掛けられない。大統領府では北朝鮮との直接対話を全く望んでいないが、民主党の圧力により劇的な対話再開の可能性が出てきた。こうなるとクリントン政権時と同じように、日本の頭越しに事態が進んでゆく可能性が高い。日本の懸案となっている拉致問題の道筋はまた不透明なものになる。そして94年時と同じように、エネルギー支援、人道支援が始まり日本は金だけを出させられるのである。 その時点で、日本がアメリカ抜きで外交・軍事・金融面で強行な立場を維持は出来ないだろう。

イラン問題においても民主党はやはり対話による解決を望んでいる。しかし既にフランス、ドイツ、ロシアによる対話による説得は失敗を続け、イランの時間稼ぎに巧くのせられている。

エネルギー以外、違法移民・ヘルスケアー問題は共和党・民主党が互いの意見に唯一妥協出来うる案件だ。 しかし今回の選挙を受け、民主党側が妥協する必要は一切なくなり、むしろ共和党側には飲みにくい条件の案件が続々と出て来るだろう。しかし少数派の大統領は、飲まざるを得ない。

将来のアメリカの成長に必要なエネルギーを確保しつつ、中東をアメリカの同盟化するはずでった、共和党ネオ・コンサヴァ派の計画はもろくも崩れかかっている。エネルギーを安定的に確保するはずのイラクでの戦いが、多大なエネルギーコスト負担となってアメリカ人だけでなく、世界中の人々にツケを払わさせた。このまったくあべこべな状況は日本人でなくとも、 またアメリカの共和党員でさえ首をかしげる結果となっている。そして現職副大統領のエネルギー、医療(タミフルー)などのスキャンダルも共和党政権であるブッシュ政権に大いに痛手となった。

     

今回の選挙の結果は2008年に行なわれる大統領選に大きな影響を与えることになりそうだ。 恐らくこれが何より今回一番の民主党での選挙の成果であろう。ブッシュ政権では、1−2期と安全保障・安保・テロ問題と一定の政策を行なってきた、しかしそれらが今回の選挙によって、国民の支持を得ていないことがはっきりしたことになり、次期政権では民主党候補になろうとも、共和党候補になろうとも、今までのような政策は出来ない。しかし次期大統領選では、共和党は現国務長官であるライス氏、元ニューヨーク市長のジュリアーニ氏共にタカ派で、現在のブッシュ政権の政策を継続すべきと考えているようで、または現状では大きな変更をすべきでないと考えているようで、彼らが仮に共和党推薦の大統領候補になろうとも、現状からすると難しいであろう。 また以前は強力な共和党大統領候補でもあった、上院議員、マケイン氏はジュリアーニ氏より更にタカ派と言われているが、今までの強硬路線が現在の状況を考えると、仮にマケイン氏が名乗りをあげても 彼も難しいであろう。

対する民主党推薦大統領候補は、現在ではヒラリー・クリントン、ケリー、そしてアル・ゴアーなどの潜在的な推薦 候補が存在するが、現時点では誰も明確な名乗りを挙げていない。しかしアメリカ人の多くの女性が史上初の女性大統領を望んでいる声は多く、民主党ではヒラリー、共和党ではコンディーと女性一騎打ち となる可能性も否めない。しかも前回の大統領選挙では後一歩と言うところで敗北したケリー氏も次回の大統領選に出馬を臭わせるところもある。最後の大番狂わせの可能性があるのが、元副大統領のアル・ゴアーだ。彼も現職大統領のブッシュとは因縁の対決で敗れている。その後、政治の舞台からは一線を引いたと言うが、未だ影響力は元大統領のクリントンと並び大きく、ITセクター、バイオ、通信、環境と言った新しいタイプの産業界から圧倒的な支持を得ている。

           

今後、大多数の民主党に両議会を人質に執られたブッシュ政権は、外交・安保のみならず経済・国内問題においても難しい舵取りをさせられるに違いない。結果、日本においては、新生安部政権は アメリカより更に難しい舵取りをさせられる可能性が出てきた。 国民世論・政権・議会における意見が一致しているにもかかわらず、強い外交手段を持たない日本は、今度はアメリカの都合によって方向転換をされられる可能性すらある。

     

そして、その様なことは圧倒的日本人は望まないであろうが、朝鮮半島から東アジアの緊張は一時的に解消する可能性はあるが、それは94年時と一緒で、また情勢が変われば直ちに今以上の危機に直面する。そしてその時に、核実験を行なった後、やはり叩いておけば良かった、とならない保証は今までが今までだけに、十分 ありえるのである。

おわり

 

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