Rep. Journal, July 2006

Issued July 2006

 

最近非常に興味深い映画を観た...

それはアメリカ合衆国前副大統領のアル・ゴアーによる"An Inconvenient Truth"と言う映画だ。彼が長年リサーチしてきた地球温暖化問題を映画・ドキュメンタリー化することによって多くの人に問題意識を持ってもらおうというものだ。まあ映画というより、実際見てみると、大学での講義を見ているようだった。感想はとてもインスパイヤーされるものだが、日本人としては 、とかく省エネと言う言葉を1970年代から使っているので、それほど抵抗感や不信感は無い。しかしアメリカ人にとって、コンサヴェーションという似たような言葉を使い・聞くことはあっても 、また実際にそれを実行している個人は居ても、個人の集まりである国家とすれば、決してそうではない。映画上でも多くの歴史的有名人のクウォートが出てくるが、環境ほど自分達に結果責任として現れ、それと共に生きてゆかなければならないものは無い、と言うのは 正に本当であろう。

映画中で、地球と金塊が吊り下がった天秤が出てくる。誰もが金塊が欲しい。皆はどちらが欲しいと、とアル・ゴアーは問い抱える。温暖化問題は、実は富と富の抑制という相反する問題であるから非常に難しいという。その問題こそが人類最大の問題であると。金塊は地球があるから存在するので、金塊が欲しいといって、取ってしまえば自らの住む地球 はなくなってしまう。またこうも言う、古い癖と古い技術の組み合わせでは予想のできる範囲の結果しか生まれない。しかし古い癖と新しい技術の組み合わせでは、予想もできないとんでもない事態になる可能性があると...例えば刀と刀、または弓と弓の戦いでは、予想しうる結果だと誰もが考えるであろう。しかし人類は新しい技術として、核兵器、生物兵器を作り出してしまった。そこへ"戦う"と言う古い癖が抜けないと、人類破滅というとんでもない事態を作り出してしまうと。 今人類は地球を200回破壊しても余る量の核兵器を持っている。

  

アル・ゴアーは新しいアメリカを作ろう、それが唯一欧州や日本という先進国に負けない国家を作ることだと副大統領選で訴えていた。その中心となる政策としてITと教育を国家の中心課題としてクリントン政権の副大統領を2期務めた。クリントン政権任期満了で、次期大統領候補となり、正式に出馬。結果は古い癖の抜けない大統領ジョージ・ブッシュとなった。このレップジャーナルでも、当時日本外交 に対しては、共和党出身であるジョージ・ブッシュが日本にとっては良いのではないだろうかと書いた。事実ブッシュ大統領期における日米関係は歴代今までに無いような黄金期となった。

しかし 歴史に”もし”はつきものである、当時もしブッシュ・テキサス知事がフロリダで大敗し、前副大統領のゴアーが大統領になっていたら歴史は、そして人類はどうなっていただろうと 考えさせられる。当然イラク戦争はなかったと思うし京都議定書には批准していただろう。もしかすると911テロ規模のテロは起きなかったかもしれない。数週間前にCNNのラリーキングライヴに出演したときに、はっきりもし自分が大統領の時にテロがあってもアフガニスタンへは行っても、イラクに入っていなかったであろうと言った。まあ後になって言うのもなんだが、ただ個人のポリシーや信念は、現大統領とゴアーでは違いすぎるほどの差はある。

クリントン前大統領は歴代のアメリカ大統領の中でもっとも低俗な大統領である共に、アメリカ最大の好景気を作り出した大統領とも言われた。それはゴアーの掲げた政策、情報ハイウェーが軌道に乗りIT企業が投資・株価を引っ張り、アメリカに流入した資金で不動産など買われ、空前の景気の良さとなった からだ。先代レーガン大統領からの財政赤字は、遂にクリントン政権時に黒字になった。それが現大統領になってから、テロ・戦争・環境破壊と偶然にしても出来過ぎているほどの、”公共事業”を行なった結果、国家として空前の財政赤字となってしまった。 たかが数年でそうなってしまったのだ。こつこつ先代が積み重ねてきたものが、ドラ息子が一瞬にして使ってしまった様なものである。

...アメリカ人はとんでもない間違いを人類に対して、してしまったかもしれない...そう思うのは世界中でも自分だけでは無いだろう。

ところで映画の締めくくりでは、アメリカ人が団結すれば出来ないものはないと映画を観ている人々に訴えている。世界で初めて、自由・人権を保障した憲法を作ったり、奴隷を自ら廃止し、全体主義国家を大西洋・太平洋をまたぎ同時に崩壊させ、月に人類を送り、冷戦でソ連というアイデオロジーを負かした。今アメリカ人が団結すれば、人類の最強の敵、地球温暖化という自分達 が作り出したエゴという意識に勝つことが出来るとインスパイヤーさせている。

この映画は非常に大きなマクロ的なビューで製作されている。

しかし今回この映画を単にレヴューの一環として取り上げたわけではない、相次ぐ戦争、テロ、原油高騰と、ブッシュ政権になってからほとんどいいことが無い。全く良いことが(多くに人が低金利によって住宅を手にした)なかったわけではないが、しかしそれらを帳消しにするような 出来事が相次いだ。そして気象変化が原因と思える、山火事、竜巻、ハリケーンの襲来などは世界規模で拡大していて、すでにアメリカ人から見ても、我々人類が1900年以降から続けてきた技術革新が結局は人類全体を危機に陥れてしまったようだと気が付き始めている。 現実のこのジャーナルを書いているときは、欧州では40度近くの熱波で多くの人が亡くなっている。アジアでは台風崩れの前線が中国大陸から、韓半島、そして日本と延びていて、多くの水害が発生、多くの人が被害に遭っている。アメリカではやはり熱波で、涼しい夏が訪れることで知られているロサンジェルスでも、日本の夏のように蒸し暑い日が続いている。明らかに世界中の気象が変である。...それはそれこそ、そのAn Inconvenient Truthをみれば全てが納得できる。

あと数年で大統領選が行なわれる。共和党・民主党共に具体的な候補はまだ出ていない。しかしブッシュ政権の過去8年にわたる経験は確実に次の大統領候補を今までのような方向へは導かないであろう。 ほとんどの普通のアメリカ人は相次ぐ戦争によって得たものは全く無いと感じている。本来なら不安定要素であった中東を安定させるが故の戦争も、効果は全く逆で、原油高を世界中にもたらした。 そしてこの映画を地球温暖化という人間の尺度では実証できないようなことを、政治的に利用し、次期大統領選を有利に結び付けようとしているのかもしれない、と多くの人が思うかもしれない。ただ地球温暖化ほど、地球規模での利権・エゴが原因で起きているものは無い。地球には人類以外の道具を使ったり、物を作り出す生物はいないのである。

ミサイルディフェンスに絡む北朝鮮問題にしても、非常に大きい地球規模のマクロヴューからしてみれば、アメリカに対する大規模公共事業の一環でしかないかもしれない。何兆円という莫大な金を使おうが、地球規模での環境という側面では一切関係がない。確かに核やミサイル問題は目先の問題で、幾ら地球を助ける努力を続けても、核兵器が実際に日本列島に飛んでくれば、セーヴ地球と言ったところで全く意味が無い。それこそ金塊・地球天秤のようなものである。しかしその反面、ミサイルディフェンスのような実際に役に立つかどうか分からないものに数兆円を出すなら、地球温暖化に使った方が世界規模、いや人類に対する最大の貢献が出来る かもしれない。日本には技術も資金もある、そして環境・地球温暖化に絡む利権も少ない。

映画の中でも、後半、日本が人口比・やGNP/キャピタ比による温暖化が少ない国、自動車の排ガスが世界一少ない車を作る国、と紹介している。偶然にも、原油高によって、アメリカ自動車製造業と日本の自動車製造業が売り上げ・技術の面で 全く逆転していると説明している。日本人誰もが思うことを冷静に言えるアメリカ人は非常に少ない。

しかし深く掘り下げれば、日本の二酸化炭素排出量は京都議定書で定められた量を守れていない。かたちの上で守れているのは、排出権を太平洋諸国やアフリカの国々から買っているからだ。つまり現実には達成は程遠い。アメリカではあと数年は大統領が変わることは無い。しかし日本はあと数ヶ月で首相が変わる。北朝鮮・アジア政策・靖国問題・中国政策と問題は山積しているが、その中でも人類に対するという意味では、この地球温暖化問題も最重要課題の一つとして具体的な政策を作って欲しい。またそれが、経済・技術などでアメリカだけでなく世界をリードできるからである。

一番可能性のある人は、外交政策だけでなく、アメリカが嫌な顔をして も、人類に対する貢献という政策をうち出さなければ正に人類に将来は無い

おわり

 

 Bobbie's Rep. Journal    Tomi Craft   TC Blog   Tomi Craft Japan Twitter   Tomi Craft USA Twitter