Rep. Journal, Mar 2006

Issued Mar 2006

 

   今アメリカでは精子バンクを活用した妊娠ケースが急速なペースで増えている。精子バンクを使った妊娠は以前では妊娠が様々な理由で出来ないカップルが利用していたが、最近では結婚していない女性による妊娠が増えている。それは結婚が子供を作るための手段の一つから、結婚そのものの存在が選択域のひとつになったことが挙げられるだろう。そして以前に比べ優良な精子の値段が大幅に下がったことも大きい。経済的理由以外にも単に優秀な子供が欲しいなど、子供の産み分け・ブランド化が進んできているのも事実だ。そこで今回は精子バンクを利用し、思わぬ事態が発生しつつあることをリポートした。

日本だけでなく世界中の先進国では今勝ち組ー負け組みの概念が存在する。これは経済的理由による社会的組織構成の再編である。経済的に豊かな人が、より豊に成りうるチャンスが与えられ、豊な人だけが社会秩序の中でより上位の位置を占めることができる。社会で上位を占める人は、経済的な豊かさだけでなく人間の成長をつかさどる好条件の環境を入手することが出来るため、彼らの子孫は 次社会でより高い位置を占めることとなる。 特に最近厚生省が発表した統計によると、1971−74年生まれの女性では51%が結婚をしていないという。彼女らの本音は普通に結婚をして子供が欲しいという。71ー74年生まれは団塊ジュニア世代とも呼ばれ戦後2回目のベビーブーマー世代である。晩婚化はこれだけで別のジャーナル・リポートが出来てしまうぐらい複雑な現代特有の問題であるが、このような状況で、この精子バンクの活用も視野に入ってくる。しかし日本では売買による精子・卵子を認めていないし、これらを用いた妊娠は法律上認められていない。

アメリカでは最近精子バンクが大いに活用されている。以前では病的・不妊症などの理由だけで活用されてきたバンクは今や数十万を超える精子を冷凍保存している。人種・バックグラウンド・教育程度・知能指数・目、髪、肌の色など で区分けされた数は今や以前とは桁違いである。 そして人間は誰でも次世代を担う子孫には自分より優秀であってほしいという欲求を持っている。そして人類という種はその種が死ぬ前までに自分のDNAを持った種を残したいという欲求がDNAに書き込まれている からだ。しかし最近の晩婚化や様々な理由により、この人間の基本ともいえる本能・欲求が満たされないでいる。結婚をしなければ子供は作れないからである。しかしこの精子バンクの存在は最近の社会現象を完全に覆す可能性がある のだ。つまり女性は結婚をしなくても子供が出来るということだ。そして長身・金持ち・イケ面と良い条件以外の男性の種は淘汰される可能性も出てきた。 このまま精子バンクが活用され続けられれば、経済的格差による社会構成からDNAを元とした社会構成に変わる可能性が出てきたのだ。今まで負け組みと思われてきた人々でも、より良いDNAを持った精子を入手することによって、勝ち組に変貌する可能性が出てきた。 現実にアメリカではそれに近いような事が起きはじめている。

これから説明するのは実話である。

ロビンとシンディーはパートナーの仲である。社会では未だ女性同士という組み合わせ珍しい。男性・女性同士のゲイの存在は以前に増して数の上での総数は増えてきてはいるが、やはり社会からの風当たりはアメリカ社会とて厳しい。そんな彼女らは子供が欲しくなったので、精子バンクに依頼、$320で48QAHという精子を購買した。48QAHとは精子バンクが購買者に提供するID番号である。この48QAHのドナーは190センチを超える長身、そしてブラウン色の髪の毛にグリーンの目、そしてドナーは病気の子供を助けることに興味があるという。何にも増してこのドナー、精子のドナーになったのは、メディカルスクールの学費を稼ぐ目的だからだという。シンディーとロビンは直感的にこのドナーの精子のほかに無いと思った。ロビンはやがて受精手術を受け無事妊娠、元気な男の子を出産した。ウェイドと名をつけた。

その後ロビンはパーティーである女性・マレンと仲良しになる。シングルマザーのマレンは妊娠しており、話によると彼女もカリフォルニアのとある精子バンクから精子を買って妊娠をしたのだという。そして深く話をしていくと、なんと自分と同じドナーの精子で妊娠したと言うのだ。48QAH!マレンもドナーの情報が気に入って精子を買ったのだ。マレンはお腹の子に既にライラという名前をつけていた。女の子である。しかし不思議なことは単に同じドナーの精子で妊娠・出産しただけでなく。考えてみれば、この子達・ウェイドとライラは半血の兄弟なのだ。

その後シンディーとマレンはあるインターネットサイトで自分の精子IDナンバーを公開しているサイトを見つけた。なんとそこでは多くの女性がこの48QAHを使って妊娠・出産をしていたのだった。20人ほどである。しかしこのような現象は偶然起きたのではない。一人ひとりの女性が自分の子供にと願って得た精子である。

その後48QAHを使って出産を果たした女性たちが連絡を取り合い遭うことになった。集まってきた親子たちは口々に他の子供を見て、自分の2歳の時に似ているとか、自分と口がそっくりだとか共通点を探しあっている。集まった全員が急に大家族になったわけである。

アメリカのように個人個人の権利や社会における個の権利を主張する社会では”伝統的"家族の維持は難しい。その中で女性が物理的に男性との間に妊娠をすることなく、また男性や結婚を必要とせずに妊娠が簡単に出来ることは倫理的にどうなのだろうか?48QAHで出産した別の女性の子供、ライアンは既に15歳になるが、彼はドナーに負けず劣らず優秀だ。彼はすでに その年でコロラド大学で航空エンジニアリングの勉強をしている。将来はロケット科学者になるのが夢だと言う。しかし彼は時折、自分が誰でどこからきたのか分からず考えてしまうこともあるという。親はやはりシングルマザーだが、ライアンが生まれてくる前にある程度環境を準備したのだと言う。

優秀なドナーの精子で生まれ・育った彼らは、環境さえ許せば全員優秀な将来がある程度約束された子供達である。そして母親はこの子供達が生まれる前に、ドナーの特徴を理解しているので、事前に生まれてくる子供がどのような特徴・性格・能力を持っているのか分かり、生まれた後はその能力を伸ばすべく環境を整えてゆけばいいのである。

つまり世界的に有名なピアノの演奏家のドナーで妊娠すれば、住まれてくる子供にピアノと良い音楽の環境を与えれば、ドナーのように世界的な演奏家になる可能性は高い。少なからず遺伝子学的には能力はある。そして生まれてくる子供の能力が既にそうであると分かっているのである。

一見、子供が出来ないカップルに朗報と思われたこの精子ドナー、妊娠・ビジネス。展開によっては将来大変な社会が待ちうけている可能性がある。もしこれら優秀なドナーの精子を利用した子供が各界に将来入り込んでいくと、結果的に同じ遺伝子が社会をコントロールして いく事になる。これは非常に怖いことだ。最近ではアメリカの有名な映画女優が精子バンクから精子を購入し妊娠・出産したケースなど、社会では倫理性よりも女性が男性に頼らず妊娠することに注目が集まっている。

精子バンクを使った妊娠・出産、メリットもあればデメリットもある。

メリットは明らかに手軽であるということだ。2人で行なうところを1人で出来る。全ての判断を自分自身だけですることが出来る。デメリットは将来に対する不安要素がぬぐえないと言うところだろうか。例えば、知らず知らずに同じ遺伝子を持つ子供同士が結婚した場合。大規模な遺産相続が発生した場合。将来的な遺伝子の安定性と安全性。半血兄弟・姉妹達の集団組織化。社会・文化・倫理・価値観の破壊。 人種沙汰の可能性、が考えられる。どれも現在では大きな問題ではないが、将来どうなるか分からない怖さはある。また将来はこのような遺伝子工学によって重大犯罪は減るかもしれない。犯罪を犯した人のDNAは受け継がれなくなる可能性があるからだ。

しかし将来はこのような妊娠・出産を政府が規制に乗り出すかもしれない。規制とは精子バンクを使った妊娠を行なうことそのものではなく 、どのような能力を持ったDNAをどのような人種・社会に反映させるかということだ。政府が均一に優秀なDNAを持った人間を様々なセクターに入れ、業界によっての能力の偏りを防ぐかもしれない。 つまり政府がこのドナーの精子で妊娠・出産した場合、生まれてくる子供は、将来この業界とこの業界に就職OK、などというものだ。

政治家で考えてみれば、アメリカの各州で、同じ遺伝子を持った議員が出現すると、結果的にアメリカそのものがある遺伝子によって支配されるという現象が考えられる。この遺伝子は哲学的にも、倫理的にも最優秀なドナーの遺伝子を持ったものであれば、論理的には国の運営は良くなるかもしれない。

...結果、何かしらの劣勢な遺伝子を持つ人は、将来様々なところで差別・偏見を味わうことになる。最近ネーチャーなどの科学雑誌では、人間をつかさどる性格は生後・様々な環境で作られるのではなく、生前に既に遺伝子によって性格は出来ていると発表した。我々人類が様々な概念で最良と思われる人間を作ることは、結果的に人類がもっとも恥ずべき差別を作り出してしまう可能性がある。科学技術の進歩と倫理の矛盾である。

まさに映画のようだが、科学進歩による人類の進化・成長のターニングポイントは明らかに来ているようだ。近いうち 新人類・旧人類(選択交配・自然交配)なんて言う言葉も出来るかもしれない。

おわり

 

 Bobbie's Rep. Journal    Tomi Craft   TC Blog   Tomi Craft Japan Twitter   Tomi Craft USA Twitter