Rep. Journal, Mar 2005

Issued Mar 2005

 

まずはこの写真。見ただけでぞっとする。天然痘によるものだ。じっと見つめた彼女の目が哀れで仕方がない。

一般的には天然痘は地球上から撲滅したことになっている。しかし軍事強大国、アメリカ・ロシア・中国の兵器庫にはこの恐ろしい生物兵器が保管されている。特に中国では台湾や日本をにらみ、この種の兵器が闇で増産されているのだ。これらの軍事強大国ではこの生物兵器用バクテリア・細菌を大量培養・強化し、この自然界では存在しなかったレベルに強化されている。”強化されている”とはどういうことかというと、普通のバクテリアは温度・湿度など生物自然界における自環境に弱く、長い間生きていることが出来ない。しかしこれら”強化”されたバクテリアは、熱・放射線による殺菌などにすぐれた耐性をもち、自然界に放出されると長らく生き延びられるのだ。つまりちょっとやそっとの消毒・防疫活動をしても死滅しないという恐ろしい兵器だ。アメリカ・ロシア(ソ連)はこの生物兵器の恐ろしさを実験を通してよく知っているので、生産できても決して彼らは使うことはなく、第三国に技術や兵器そのものが行き渡ることすらなかった。実際に世界のどこで使われても自分達に致命的被害が出るのをよく知っているからだ。これに比べいわゆる化学兵器は、核兵器と一緒で生物兵器と比べると人類死滅をさせることはない。部分的破壊力は非常に強いものの、化学兵器は人から人に蔓延する確立が低く、化学洗浄をすれば中性化することは比較的容易だ。核兵器は全世界又は米・ロで保有している核が互いに攻撃しあわない限り人類は死滅しない。しかし生物兵器は、たった100mlボトル分の兵器級バクテリア・細菌を人ごみに撒かれただけで、人類を死滅させる可能性があるとんでもない物だ。

最近これら生物兵器を使ったテロを警戒する動きが更に高まってきた。高まってきた、というより公にはされていなっかたのだろう。SARSのときに世界レベルで生物兵器の恐ろしさは伝えられたものの、人間とは忘れやすい動物だ。あのころの緊張感はどっかに行ってしまったようだ。しかし最近、アメリカABCナイトリーニュースで、再び生物兵器を使ったテロに対する警戒を忘れないようにとばかりに、今年の1月におこなわれた”Atlantic Strom"と呼ばれる生物兵器を使ったテロに対する円卓演習の件が報道された。番組を見た後には反響が多かったようだが。なぜABCが深夜番組帯にこの放送をしたのかは、番組を後で見てよくわかった。

そもそもこのAtlantic Stormは国家における意思決定機関・国際機関が緊急事態にどのように行動をとるのか?またどのような問題が存在するのかというようなことをこの円卓演習においてあぶりだして、実際に危機が起こった場合対処しようというものだ。"Atlantic"といっているように、このシミュレーションに参加するのはアメリカ・フランスの大統領、ドイツ、カナダ、イタリア、オランダ、ポーランド、スウェーデン、イギリスの 各首相、そしてWHO事務総長達だ。シミュレーションなので本物の大統領や首相は出てこないが、ちなみにアメリカ大統領役は前国務長官のオルブライトが担当することになった。各国の"役者達”は当然その国々を代表する前政府関係者や国際機関従事者など本当の国際関係を実際に体験してきた人ばかりだ。

この演習をよりリアルにするため、GNN-Global New Networkとよばれるインターナショナルニュースが各国の政権アドバイザーに直接各国の状況を伝えることになっている。演習でのGNNは現実にはCNNと理解すればいいだろう。

シナリオは2005年1月14日のワシントンDCでのサミット”環大西洋安全保障会議”を前日にして天然痘発症例がドイツ、オランダ、スウェーデン、トルコで見つかるというGNNのニュース速報から始まる。この時点でアメリカでの発症例は出ていないので”オルブライト米大統領”は最善の協力を発症例のあった国々の首相に伝えた。    

そして各国の大統領・首相・WHOなどが実際に天然痘かどうか自国で確認作業を急ぐようにと指示しているとき、GNNが速報を告げる”アルカイダがフランクフルトの空港、ワルシャワ・ポーランドロッテルダムの地下鉄、トルコのグランドバザールで天然痘をリュックサックに入れたボトルから散布した”と。各国の首脳がどう対処するか論議している最中に、まずトルコから天然痘予防注射を各国に大至急空輸してほしいとの要請が入る。トルコはNATOのメンバーで本国で大規模な安全保障を脅かす事態が発生した場合、NATO参加国に協力を要請できるのだ。しかしこの時点で既に欧州にあるすべての予防注射をかき集めてもトルコの要請には応じられない発症例数が出てきた。欧州連合は米国分を大至急欧州・トルコに空輸することを要請。オルブライト大統領はいやいやながら応じながらも、イラク戦争でのフランス・ドイツのアメリカへの批判・非協力を痛烈に批判。フランス大統領は、イラクのときと今回は全く違うと言い合いになっている。この時点で欧州連合は予防注射が圧倒的に足りない分を1/4から1/10に薄めたリング散布を検討。しかしリング散布は歴史上行われたことはなく予防できるかどうかの確証が無いのだ。それどころか、その副作用で死人すら出る可能性がある。

そこへオルブライト大統領の下にニューヨーク・ペンステーション、ロサンジェルス国際空港にも天然痘が撒かれたという報道がGNNを通しての報道されると、直接上院・下院議長からも大統領の下に電話が入った。”アメリカにある天然痘予防注射は米国民の税金で作られたもので外国には一切送れない 、議会はそのような行動を許さない”と。  

フランスがこれに大反発。もしアルジェリアやアフリカのフランスの植民地から応援要請が着たら、自国分を犠牲にしてもそれらの国に送るのかと、これまたアメリカが大反論。”これはすべての欧州の国々で未だに植民地や保護国があるすべてにいえることだ”、”またそれらの国々が植民地からの応援要請に応じられないなら、これほどの人種差別はないだろうと”アメリカは止まらない。

当然この時点で欧州の国境・空港・駅・港湾はすべて閉鎖。経済鎖国状態になっていた。しかしアメリカでも発症例が起きていない州政府が、州境を連邦政府の許可なく勝手に封鎖し始めるという報告がGNNの速報で報道される。明らかに首脳達の対応が後手に回っているのが報道の内容・スピードから見てもわかる。

フランスは備蓄予防注射を一度WHOに預け、WHOが配布することが各国のエゴが出ないと提案。アメリカは自国民の税金で製造したものをどうしてWHOに渡さなければならないのかと、ごもっともな返事。具体的な対応が取れないまま約束のデッドラインの6時間が訪れ、シミュレーションが終了になった。

このAtlantic Strom卓上演習を通してわかった問題点は:

1)どうやって環大西洋各国が新しいタイプの脅威に対処できるか

2)公衆衛生の維持は安全保障とりわけ国際安全保障問題か

3)どのように国際機関、EU・NATO・UNが共同で対処するのか

4)NATO憲章の共同防衛が発動できるのか

5)各国首脳がどうやって国内政治にプレッシャーを持ちながら国際的に協力体制をとれるか

6)どのように備蓄分を足りない国々と分け合うことが出来るのか

7)WHOが純粋に公平を保つことが出来るのか

8)経済的損失をどのように補償するのか

9)どのように大衆・メディアに対応するのか

オルブライト前国務長官は演習を終えて、結局はどのように人々を教育していくかだ、といった。結論を言うと、この手のテロには現状では対応できないということだろう。

またABCナイトリーニュースがどうして深夜帯に放送したのかといえば、単純に説得力があり本物と間違えるもしくはパブリックがパニックになる可能性を危惧したからだろう。

この円卓演習を見て日本の対応を考えると:

官僚が文章を用意できないような緊急状態下での首相の英語力と知識力が今までの首相には余りにもなかった。なぜ日本が国際上で国家権益を主張できないのかはこのシミュレーションを見てよくわかる。あの会議の中で、日本の首相が他の首脳達と渡り歩けるだろうかと 聞かれれば、答えは無理だろう。アメリカやフランスがなぜ国際環境で大国といわれるのは、自国の主張を貫くからだ。その主張がとっぴでも・むちゃくちゃでもその自国に対する国益が維持されるなら曲げない。北朝鮮がいい例だろう。

日本はまずこのAtlantic StormのPacificバージョンを早急に開催検討すべきだろう。

おわり

 

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