Rep. Journal, May 2004

Issued May 2004

もう何ヶ月経つのかわからないが、 イラクでの情勢が悪化の一途をたどっている。親米国・イラク派兵国家以外の世界からはざまーみろといわんばかりの雰囲気がただよっている。しかし中東の不安定化は そのように思っている国々にも少なからず、すぐにエネルギー高騰をもとにした経済危機に見舞われる可能性が出てきた。すでにアメリカの隣国カナダではガソリン高騰が問題になってきている。 先日のOECD会議でもガソリンの高騰が協議された。大量に派兵している米国でも本来ならガソリンの価格が安くなると思っていたほとんどの人をがっかりさせる状態になっている。 いまやガソリンは1ガロン$2.50ラインにまできているのだ。最近のイラクにおける様々な事件とこのエネルギーの高騰で、今アメリカは割れている状態だ。

大衆が割れているのは、Mediaが進んで誰もが実際の状況をタイムラグなしに得られるようになったことが根底にあるのだろう。しかし実際に起こっていることがMediaの格好のビジネスに結びつき煽られているのも一因で る。

アメリカだけでなく日本など中東にエネルギー源を依存している派兵国家は多かれ少なかれ、ジレンマに陥れられている。 最近イラクで起こってきていることは、冷戦構造のにあったような単純なイデオロギーを元にした代理戦争ではなく。先進国と後進国の間に生まれた富の分配と宗教観によるものである。キーワードは、 戦争の形、米国型民主主義、エネルギー そして自己責任だろう。

戦争の形とは、どういう形態で国家が戦争に入っていくもしくは戦い抜いていく、ということだ。アメリカは、もはや現在イラクで行われているような非正規戦では絶対的に劣勢にさせられている。アメリカの軍事力は、冷戦で組織的な相手に対し絶対的な効果があるが、いわゆるゲリラー 、テロリストに対しての能力はそれほど高くない。米国と同じで、ほとんどの先進諸国ではこの手の戦いに弱いのだ。米軍では向こう数年で大幅な軍の刷新を図っており、より地域紛争ならびに非正規戦に対応することになっているが、 対するゲリラーテロリストもこれに応呼する形で、戦いの形を正規軍より、より早く変えていくので基本的に常に劣勢させられる可能性がある。また国家の体制がより民主主義である限り 、これ等のつけいる隙間は多くなる。また国家の国民に対する規制を増やしていけば行くほど、テロリストに同調するものが増えていくというジレンマを抱えることになる。21世紀の戦争の形は20世紀のそれとは大幅に変わる可能性がある。

つぎにアメリカ型民主主義とエネルギーだが、これらはお互いが密接に結びついている。 我々先進諸国と呼ばれる国々に住んでいる人々は、基本的に西洋の”契約”を基にした法治国家に住んでいる。 戦前はイギリスの価値観を基とした民主主義、戦後は、アメリカの価値観を基とした民主主義のもとで世界は秩序を持ち続けてきた。しかし21世紀になりこの価値観は20世紀の後半とくに冷戦終了の瞬間から揺らぎ始めてきた。アメリカの価値観、資本主義下における欲を基にした価値観は確かに科学の進歩に伴い矛盾し始めた。我々の生活を支えているのは、家族や人々との繋がりが基本にあったはずだが、いまやエネルギーとカネにとってかわってしまった。その為のエネルギー確保と民主主義の為といいながら行われているイラクでの様々なことは当然そのような価値観が薄い人々には受け入れられない。

まさにイラクや世界中にいるテロリスト達はこの概念を持っていない。テロリストといっても、線引きをするのは非常に難しく、我々と彼等のどっちが正しいのか判断できかねる。彼等の行動は彼等の信じる宗教観を基にしているのだが、我々も我々の生活観・価値観を信じている限り、ある種の宗教観の基に行動をおこしているといってもおかしくない。この答えは結局武力を持って解決せざるをえないのだ。戦前の日本人の信じた価値観はアメリカの価値観との直接対決によって決着をみた。今回も恐らくそうであろう。ただし日本のように価値観が否定されたからといって、人道的 道徳的に間違っているとは限らない。

自己責任だが、日本でもイラクにおける日本人誘拐がきっかけで自己責任論が吹き荒れた。日本政府はこの時期に危険ということがわかっていながらイラクに行って、誘拐されたのはまさに自己責任問題。政府としては、費用の一部を彼らから回収するといっている。事情が単にイラク人を支援するため行ったのと、報道の目的があって誘拐されたのでは事情が全く異なるが、費用を当事者に負担させるのはおかしいだろう。たしかに支援の目的でイラクに行ったこと自体は褒められることだが、時期が悪かった。このような事態になる可能性はわかっていたはずだ。わかっていなければ、まさにあまちゃんだ。報道目的で行けばどんなことがあるかわからない、だから行かないのでは報道にならない。そして誘拐されてしまうのとは前者 との性質は違う。その点、先日、全世界にショックを与えたアメリカ人の誘拐殺人事件はまさに、前者の支援活動と同じレベルだろう。ほとんどの一般アメリカ人は、今イラクで起こっていることを考えると、このような形で殺されてもおかしくない、という意見と 、このようなことを起こす、イラクにはこれ以上関与をせず、勝手にやらしておけばいい。またこのようなことをする国だから、核でも落っことしてしまえ的な強硬論がある。 結論からすれば、戦争だからこのようなことは日常茶飯事で起こっているし、防ぐのはむり。日本が第二次大戦中占領国でひどい事をしたというように、アメリカも朝鮮やベトナム、ソ連は、シベリア、アフガニスタン、戦後のフランスのドイツへの 地雷原での報復など、人間の歴史は殺し合いなのだ。だから こそ平和が大切だといえる、それを世界中に伝えるのが報道の仕事である。この殺されたアメリカ人はイラクに仕事を探す目的で入国、FBI−イラク警察に数回拘束され、その後アメリカ政府により、ジョーダンに向け政府が安全な退避路まで用意したが、本人 が拒否されたという。まさに自己責任の究極の形だろう。

日本政府も、自衛隊を大金をはたいてまでイラクに派遣したり、インド洋での給油作業のことを考えると。わけのわからない本音か偽善か分からない人たちによって日本の立場を危機的状況に追いやったことで頭にきて、経費を払えといったのであれば、わからないわけではないが...そもそも国論が割れるような論争がなされないままイラクのことが進められていってしまっ た状況を考えると、どっちもどっちに見える。ただひとついえることは、日本は様々な矛盾に向き合いながらやっと、普通の国家のように法体制を整える声が挙がってきた、または国民の間で討論になってきたということだろう。

アメリカにおいては今年は大統領選の年だ、誰がつぎの大統領になるかはイラク情勢と景気によるところが多い。しかし今や30%の国民がアメリカ本土以外で生まれたアメリカでは今までのアメリカ型民主主義を存続することさえ限界が見えてきた。今世論が割れているのは当たり前なのだろう。

まあ小泉純一郎が日本の首相でなくても、誰が首相になろうと日本は、様々な矛盾に悩まされ続けるのだ...

おわり

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